ノンおばさん 24
- Day:2013.12.31 13:23
- Cat:第9章 ノンおばさん――老熟の踊り子
お祈りの言葉を唱えるとき、いつもこう言う、「過去の命において、どんな恐ろしいカルマをつくったのかわかりません、それでも神さま、これまで為した良いカルマを認め、お聞き入れ下さい。次なる人生は平穏に暮せるようお願いします」
かつては、何が起きても、起きるべくして起きたのだと思った。世の中にとって何の価値もないでくの坊だという気がした。このむさ苦しい部屋で死に、何日も誰にも気付かれないのなら、それでもいい。誰にも面倒を見てもらえないことを、受け入れようとしなくてはならぬ。
とは言っても、いまはだいぶ安心している。とくにゲイや性別越境者(トランスジェンダー)社会の人たちが、私を気遣ってくれるから。まるで年上の親戚――おばさん――のように私を引き受けていて、無縁仏として終わらないようにするから、と約束してくれる。
まともな葬式も挙げてくれるとも言う。ほとんどの年寄りにとっては、それはとくだん素晴らしい約束ではないかもしれないけれど、私の場合は、実に心のあたたまるものだ。自分を忘れない人がいると、今ではわかっているよ。私の暮らし向きを良くしようと、人々が立ち寄ってくれるたびに、みんな少しずつ私の命を吹き返してくれるような気がする。
つまるところ、私は身寄りのないおばさんだ。私を引き取る気はないかね?
(了)
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